住宅改修

神奈川県は、高度経済成長期に人口が急増し、団塊の世代の高齢化とともに、少子高齢化が急速に進みつつあります。こうしたなか、2000(平成12)年に介護保険制度がスタートし、住宅改修についても介護保険が適用されることになりました。
 

介護保険制度は、要介護状態になった高齢者の自立した生活を送るための住環境整備に一定の役割を果たしてきたと思いますが、家族の問題を解決し、高齢期の生活に合わせて住宅を使いやすくリフォームすることについては、限度額が決められているなど制約がありました。
 

子育てが終わり、高齢期において、自分らしい生活を送るためには、家族との関係を良好に保ち、より使いやすい間取りや設備が必要になります。夢のある住まいを手に入れることにより、元気が出てきたり、生きる意欲が湧いてきたり、毎日を楽しく過ごすことができたり、とその効果は大きなものがあります。住宅を上手にリフォームすることにより家族間の問題を解決することもできます。
 

平成23年3月11日に起きた東日本大震災の教訓を生かして、耐震性のある住宅にリフォームしたい、家族の絆を深めたいと考える高齢者も増えてきました。

本システムが、多くの皆様の夢のある住宅改修にお役に立てれば幸いでございます。なお、介護保険を適用した場合の概要について、次に説明をします。

1 介護保険制度

(1)介護保険制度における住宅改修費支給の概要 

介護保険制度では、生活しやすい環境を整えることで、在宅での自立した生活を支援するため、住宅改修にかかった費用の一部が居宅介護住宅改修費又は介護予防住宅改修費(以下、「住宅改修費」と記載します。)として支給されます。(介護保険法第45条、57条)

ア 対象者

介護保険による要支援・要介護認定で、要支援1、2、要介護1~5のいずれかに認定された方

※ 要支援・要介護認定の申請前に住宅改修を行った場合には、保険給付対象外となります。

イ 住宅改修費の支給基準限度額

要介護度に関わらず、支給限度額は、同一住宅で20万円です(平成12年 厚生省告示第35号)。住宅改修に要した費用の9割が申請することにより支給されます。支給は、市区町村が要介護者の心身の状況や住宅の状況から必要と認めた場合に行われます。 
限度額を超えた部分については、自己負担となります。利用回数は、原則、現在の住まいにつき1回のみとなります。転居した場合には、改めて住宅改修費の支給を受けられます。

ウ 対象となる住宅

被保険者証記載の住所の住宅となります。

エ 住宅改修費の対象となる住宅改修(平成11年 厚生省告示第95号)

種  類 想定される内容例
1. 手すりの取付け 廊下、便所、浴室、玄関、玄関から道路までの通路等への設置。手すりの形状は、二段階式、縦付け、横付け等の適切なもの  
※福祉用具の「手すり」は除きます。
2. 段差の解消 居室、廊下、便所、浴室、玄関等の各室間の床の段差及び玄関から道路までの通路等の段差の解消  
具体的には、敷居を低くする工事、スロープを設置する工事、浴室の床のかさ上げ等が想定されます。  
※福祉用具の「スロープ」、「浴室内すのこ」による段差解消は除きます。  
※昇降機、リフト、段差解消機等動力により段差を解消する機器を設置する工事は除きます。
3. 滑りの防止・移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更 居室においては畳敷から板製床材・ビニル系床材等への変更、浴室においては滑りにくい床材への変更、通路面においては滑りにくい舗装材への変更等
4. 引き戸等への扉の取替え 開き戸を引き戸、折戸、アコーディオンカーテン等へ取替えるといった扉全体の取替えのほか、ドアノブの変更、戸車の設置等も含まれます。 
※扉の取替えにあわせて自動ドアとした場合、自動ドアの動力部分の設置は除きます。
5. 洋式便器等への便器の取替え 和式便器の洋式便器(暖房便座・洗浄機能付洋式便器等を含む)への取替え  
※既に洋式便器である場合の暖房機能、洗浄機能のみの付加は対象外となります。
6. その他1~5の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修 1. 手すりの取り付け  
手すり取り付けのための壁の下地補強 
2. 段差の解消  
浴室の床の段差解消(浴室の床のかさ上げ)に伴う給排水設備工事  
3. 床又は通路面の材料の変更  
床材の変更のための下地の補修や根太の補強又は通路面の材料の変更のための路盤の整備  
4. 扉の取替え  
扉の取替えに伴う壁又は柱の改修工事  
5. 便器の取替え  
便器の取替えに伴う給排水設備工事(水洗化又は簡易水洗化に係るものを除きます。)、便器の取替えに伴う床材の変更

オ 要介護状態が著しく重くなった場合の例外

最初の住宅改修費の支給を受けた住宅改修の着工時点と比較して、介護の重要度が著しく高くなった状態(下表「介護の必要の程度」が3段階以上上がった場合)で行った住宅改修については、例外的に、改めて支給限度基準額(20万円)まで住宅改修費の支給を受けられます(平成12年 厚生省告示第39号)。
ただし、この取扱いは、同一住宅・同一要介護者について1回が限度です。

「介護の必要の程度」の段階  要介護等状態区分
第六段階 要介護5
第五段階 要介護4
第四段階 要介護3
第三段階 要介護2
第二段階 要支援2又は要介護1
第一段階 要支援1又は経過的要介護

カ 施工業者等に対する質問・検査等

市区町村長は、住宅改修費の支給に関して必要があるときは、住宅改修を行う者若しくは住宅改修を行った者に対し、報告や帳簿書類の提出等を命じることができるほか、出頭を求め、または関係者に質問し、事業所に立ち入り検査を行うことができます。(介護保険法第45条第8項・57条第8項)

(2)住宅改修費の支給申請

住宅改修費の支給申請は、保険給付の適正化を図るため、事前申請と事後申請の2段階で行うことになっています。市区町村は、改修完了後に、事前申請・事後申請の内容、工事が行われたかどうか等を確認し、必要と認めたときに住宅改修費の支給を決定します。(介護保険法施行規則第74条・第75条・第94条)

ア 事前申請

被保険者は住宅改修前に、1. 住宅改修費支給申請書、2. 住宅改修が必要な理由書(76ページ参照)、3. 改修予定の状態が確認できるものを市区町村に提出します。本人や家族以外の方が申請する場合は、委任状が必要となります。また、(3)の受任委任払い制度を利用する場合は、この制度に係る委任状等も必要となります。

(ア)住宅改修費支給申請書
住宅改修の内容や箇所・規模等、施工者、材料費・施工費等の内訳が明確に分かる見積り書を添付し、着工予定年月日を記載します。
(イ)住宅改修が必要な理由書(標準様式参照)
基本的には、居宅サービス計画を作成する介護支援専門員(介護予防サービス計画を作成する地域包括支援センターの担当職員)が、居宅介護支援(介護予防支援)の一環として作成しますが、市区町村が行う福祉用具・住宅改修支援事業等で住宅改修の相談・助言を行っている福祉・保健医療・建築の専門家による作成も認められます。
(ウ)住宅改修の予定の状態が確認できるもの
便所、浴室、廊下等の箇所ごとの改修前・改修後の予定の状態を、写真や図で示します。 なお、居宅サービス計画等と重複する内容について、居宅サービス計画等の記載内容が確認できれば、(1)申請書、(2)理由書への記載は省略できます(平成20年8月からの事務負担軽減にともなう措置)。

イ 事後申請

被保険者は住宅改修を完了したとき、1. 住宅改修に要した費用(支給対象)、2. 領収証(工事内訳書を添付)、3. 完成後の状態を確認できる書類等(改修前・改修後の写真で撮影日の分かるもの)、4. 住宅所有者の承諾書(被保険者と所有者が異なる場合)を提出します。 
※ 4.については、事前申請時に必要となる市区町村もあります。

ウ やむをえない事情がある場合の特例

施設入所者等が、対処後の受入れのためあらかじめ住宅改修に着工するなど、事前申請が制度上困難なときは、やむをえない事情がある場合として、改修完了後に事前申請に必要な書類を提出することが認められる場合がありますので、市区町村にご相談ください。
申請手続きの流れ
注:各自治体によって手順に多少の違いがあります。
1. 介護認定 要介護(要支援)認定を受けていない場合は、市区町村に要介護(要支援)認定申請をしてください。
2. ケアマネジャーとの相談 ケアマネジャーが住宅改修の必要性をアドバイスしてくれる場合もありますが、ご本人・ご家族からも相談してみてください。
3. 住宅改修事業者をまじえて打ち合わせ 住宅改修をした方がよいと決まったら、ケアマネジャー、住宅改修事業者と打ち合わせをします。住宅改修事業者がわからないときはケアマネジャーに相談するのもよいでしょう。
4. 見積書・工事図面作成 打ち合わせの内容に合わせて、住宅改修事業者が見積書と工事図面を作成しますので、説明を受けながら、工事内容について本人やご家族が承認・決定します。
5. 事前申請 住宅改修の事前申請をします。施工前の写真等の必要書類を添えて申請書を各市区町村に提出します。
6. 改修工事 事前申請によって承認された工事内容に合わせて改修工事を施工してもらいます。
7. 業者への支払い 改修工事にかかった費用を事業者へ支払います。
8. 住宅改修費の支給申請 住宅改修費の支給申請をします。改修工事費用の領収書(工事内訳書を添付)等の必要書類を添えて、申請書を各市区町村に提出します。
9. 住宅改修費の振り込み 給付決定後、住宅改修費が指定の口座に振り込まれます。

(3)住宅改修費の受領委任払い制度

住宅改修費については、費用の全額を施工業者に支払った後に払い戻しが受けられます(償還払い)が、「受領委任払い制度」を利用することにより、当初から一割の金額で住宅改修を行うことができます。 
この制度を利用するためには、受領委任払い取扱事業者として、市区町村に登録された事業者を選択する必要があります。詳しくは市区町村にお尋ねください。

(4)住宅改修費の算定上の留意事項

ア 設計・積算の費用

住宅改修を前提とした設計・積算の費用は住宅改修費として取り扱われますが、住宅改修をともなわない設計・積算は支給対象とはなりません。

イ 新築または増築の場合

新築は住宅改修ではないので認められません。増築でも、新たに居室を設けることは支給対象となりませんが、1. 廊下の拡幅にあわせて手すりを取り付ける。2. 便所の拡張にともない便器を和式か洋式に取り替えるなどの場合は、手すり取付け、便器取替えの費用が対象となります。

ウ 支給対象外の工事を併せて行う場合

保険対象部分の抽出、按分等により、支給対象となる費用を算出します。

エ 被保険者等が住宅改修を行った場合

被保険者自ら材料を購入し、本人・家族により住宅改修が行われたときは、材料の購入費が支給対象となります。このとき、材料の販売者が発行した領収証のほか、工事費内訳書(使用した材料の内訳を本人・家族が記載)が必要です。 
なお、このときも、住宅改修が必要な理由書や完成後の状態の確認書などは必要です。

オ 同一住宅に複数の被保険者がいる場合

住宅改修費は被保険者ごとに支給申請が可能ですが、同時に交付が行われた場合は、申請した住宅改修の範囲が重複しないようにします。例えば、2人の被保険者が共用室の床材を変更したときなどは、どちらか一方が支給申請を行います。

住宅改修写真1
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